第1回飲食・小売業向け働き方改革関連法・・・有給休暇の義務化

今回から4回に分けて、中小企業の飲食・小売業の取り巻く環境を踏まえた「働き方改革法」をご説明したいと思います。
中小企業:資本金5,000万円以下「労働者数 50人以下(小売業) / 100人以下(飲食業;サービス業)」

今後の予定
第2回〜時間外労働の上限規制
第3回〜同一労働同一賃金」の原則
第4回〜月60時間超の残業の割増賃金率引き上げと考えております。
現在の飲食業を取り巻く問題点は大きく下記4つかと思います。
・慢性的人材不足
・アルバイト・パートスタッフへの依存度の高さ
・労働条件が悪い
・離職率が高い
この上記の状態はリンクした状態になっていると考えられます。1つを解決することで、連鎖的に解決していくことできるかと考えます。
今回から説明する働き方改革関連法が問題解決の糸口になればと考えます。
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第1回目の今回は、2019年4月よりスタートした「年5日間の年次有給休暇の取得義務化」についてです。

そもそも有給休暇とは・・・

これまでの労働基準法には、年次有給休暇(労働基準法第39条)については下記のように定められています。
雇入れの日から起算して6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者(管理監督者を含む)には、年10日の有給休暇が付与されます。
※継続勤務6年6か月で年20日が限度となります。

2019年4月より、労働基準法が改正され、2019(平成31)年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。
これまで、年次有給休暇は労働者の申出による取得が原則でしたが、ただでさえ人手不足。ことに飲食業・小売業となると上司、同僚などに気兼ねして、シフト変更でさえ言いにくい中、有給休暇を取得したいと言いづらい職場が少なくないのが現状です。
そのため、労働者ごとに年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日について、使用者が取得時季を指定し年次有給休暇を与える必要があります。(年5日以上取得済みの労働者については、時季指定不要
また、労働者ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、付与日(基準日)、付与日数、取得日、時季指定した日などを明確にしておく必要があります。この管理簿は3年間保存しなければなりません。ご注意ください。

有給所得率の現状

厚生労働省の最新の調査では、全体の取得率が49.4%と半分以下なのが実情です。
全体の労働者一人あたりの平均付与日数が18.2日に対して、
「卸売業、小売業」
1人あたり取得率 35.8%、1人あたり取得日数6.5日
「宿泊業、飲食サービス業」
1人あたり取得率32.5%、1人あたり取得日数5.2日

つまり、全業界と比較した際にワースト1、2の状況です。

もっと言えば、統計調査の対象となっているのは、労働者30名以上の企業規模であり、それよりも少ない、小規模な会社や個人事業所などは対象に含まれていません。
小規模な会社や個人事業所では「誰かが休むと仕事が回らない」とか「この仕事は私にしかできない」というようなプレッシャーもあり、有給休暇の取得が事実上難しくなっていることも珍しくありません。
労働者30名未満の企業では、上記統計調査の中小企業よりも、さらに有給休暇の取得が進んでいない可能性が高いと推測されます。

アルバイト・パートにももちろん適用されます。

有給休暇は、正社員や契約社員だけが取得できると思っている人がいるかもしれませんが、実はアルバイトでも取得できます。就業規則や雇用契約書に付与される日数などの記載はありますが、会社から説明を受けない限り、有給休暇の制度の内容について詳しく知っているスタッフはそれほど多くないのではないでしょうか。
正社員と比べ所定労働時間が短いパート・アルバイトであっても、同じ労働者です。所定労働日数、時間数に応じた年次有給休暇を比例付与する必要があります。所定労働時間と勤続年数によっては、年10以上の年次有給休暇が付与されるため、こちらも年5日取得義務化に際して要注意です。

週労働日数 年間労働日数 入社6ヶ月 入社1年半 入社2年半 入社3年半 入社4年半 入社5年半 入社6年半
4日 169〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

※右にスクロールします

①勤務が週30時間以上、もしくは週5日または年間217日以上の場合

初年度は、年間10日間の有給休暇が付与され、勤続年数が増えると、取得できる有給休暇の日数も増えていきます。勤続半年で最初の有給休暇が発生したあとの3年間は、勤続1年ごとに11日、12日、14日と増えていきます。それ以降は、1年ごとに2日ずつ増やした日数分を勤続年数に応じて取得できます。ただし、ずっと増え続けるわけではなく、20日間が上限です。

②勤務が週30時間未満、且つ週4日以下または年間48日~216日の場合

一方、週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下か、年間48日~216日の場合は、所定労働日数に応じて次のように有給休暇が与えられます。

これは、週1/短時間勤務のアルバイトでも発生するということです。

有給休暇についてのまとめ

年5日間の年次有給休暇の取得義務化に関しては、雇用主には、取得させる義務のある労働者に年5日の有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金に処せられます。かかる違反は、労働者ごとに成立すると考えられるため、理屈上、5日間の有給休暇を取得させなかった対象者が10人であれば、300万円以下の罰金まで科される可能性があることになります。
実際にどの程度取締りがなされるかは労働基準監督署の実務運用次第ですが、法の仕組みとしては、大きな制裁が可能となっています。万一にでも違反することがないように、十分な対策が必要です。
また冒頭でもお話しましたが、今回の改革関連法案が店舗運営の問題解決の糸口になればと考えます。
しっかりとスタッフの待遇を上げることで、スタッフの定着率も上がり、慢性的人材不足も解決したケースも多々聞きます。

今回はこのへんで。

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